岡本整形外科 院長診療ブログ

当院での手術症例、手術実績、医院近況等をご紹介します。

人工股関節・人工膝関節同時手術

高度な変形性股関節症により、脚長差(左右の足の長さ)に違いが生じると、反対側の膝にも強いストレスがかかります。

そのため脚長差が生じたまま長期間経過している方は、反対側の膝に変形性膝関節症が生じていることがあります。

その場合、人工股関節手術と、反対側の人工膝関節手術を同時に行うことがあります。

 

紹介するのは70代の女性です

左側に高度な変形性股関節症が生じ、左下肢長は2cm以上の短縮がみられます。

対側である右の膝にも高度な変形性膝関節症を認めます。

 

左人工股関節全置換術と右人工膝関節単顆置換術を同時に行いました。

同時に行なっても、入院期間を延長することなく退院可能です。

 

左股関節と左膝関節のように同側の場合は、先に手術を行った関節に

大きな負担をかけてしまう(手術直後の部分を捻ったり、強く引っ張ることになる)ので、

1〜2ヶ月以上空けて行います。

人工関節.comに紹介されました

人工関節ドットコムという医療情報サイトからインタビューを受け、膝関節専門医として紹介されました。

人工関節ドットコムのホームページ(リンク)

岡本整形外科のページ(PDF)

普段、手術面談のときに話している内容がかなり含まれています。

保存治療について、どのような方が手術になるのか、どのような手術方法があるのか、

術後のリハビリや注意点など、イラスト付きで説明されています。

手術を考えている方は、予習として目を通しておけば理解の助けになると思います。

 

 

2021年手術実績

2021年手術実績

 

全身麻酔手術449

局所麻酔手術123

合計572

 

全身麻酔手術

人工膝関節全置換術(TKA66件 (再置換2例含む)

人工膝関節部分置換術(UKA90

人工股関節全置換術(THA34件 (再置換2例含む)

膝関節鏡手術142件  (部分切除・縫合・靭帯再建など) 

骨折手術30

高位脛骨骨切り術(HTO20

抜釘43

24

 

局所麻酔手術

腱鞘切開術77

手根管解放31

ガングリオン摘出6

9

 

両膝や両手同時手術は2例でカウントしています。

外来処置(切創などの縫合、骨折・脱臼整復等)はカウントしていません。

腱鞘切開は同じ手の2〜3本同時手術は、例年通り1例でカウントしています。

下腿骨(脛骨・腓骨)、前腕骨(橈骨・尺骨)の2本同時手術は1例でカウントしています。

 

去年の人工関節は191例でした。(上の一覧にのせてない人工肘関節1例を含む)

現在、関節鏡手術で1〜2ヶ月待ち、人工関節で1〜3ヶ月待ち(種類、片側のみか両側かによってもかわります)が多くなっています。

当院が19床の診療所であるため、少し待っていただくことをご了承ください。

人工股関節手術に対するPSI

2019.9.16のブログで、人工膝関節全置換術のPSI(3DCTベースでのオーダーメイド骨切りガイド作成)を紹介していまが、

人工股関節に対しても全症例ではありませんが、PSIを導入しています。

患者さんの股関節X線写真に、テンプレート(透明なシートに人工関節がサイズごとに描かれたもの)

をあてて術前計画をすることが、現在でも一般的です。

しかしやはり2次元での計画には限界があります。

股関節が拘縮(動きが固い状態)していたり、肥満、背中が曲がってくることによる骨盤の傾斜があれば、予定と大きく狂うこともあります。

3DCTでの計画は、手術での視野が悪いALS(脱臼しにくい前側方アプローチ)には強い味方になってくれます。

さらに、正確な骨切りを補助するオーダーメイドのガイド準備されるので、ほぼ術前計画通りとなります。

欠点は、ガイドを当てる部位の軟骨や靭帯を、骨から綺麗に剥がす必要があり、多少手術時間が長くなります。

また患者さんに他院へCTを撮りに行ってもらったり、データを転送・編集したりと結構な手間がかかります。

しかし、正確でない骨切りをしたために起きるトラブルや、切り直しの時間を考えれば、必須の技術といえます。

 

 

ロボット手術(人工膝関節)デモ

人工関節のメーカーさんより招待され、人工膝関節手術をサポートする、最新のロボット機器を試してきました。

模擬膝関節を使って、手術と同じように操作します。

大腿骨と脛骨の中央にピンと打ち込み、センサーを取り付けます。

モーションキャプチャー(映画でよく使われる技術)の要領で、術前に用意した画像と実際の膝関節をマッチングします。

すると、現在膝が何度曲がっているか、内反、外反、骨切り後のバランスなど。驚くべき精度で表示してくれます。

実際の手術では、モニターに滅菌されたカバーをするので、術者がタッチパネルを触れます。

靭帯バランスを確認しならが、人工関節の設置角・サイズを指示すれば、

ロボットアームが患者さんの骨に理想とする骨切りガイドを誘導してくれます。

現在当院で行っているPSI(3DCTベースでのオーダーメイド骨切りガイド作成)も、

十分すぎるほど未来の技術ですが、さらに先を見せつけられました。

この機器にも、現時点で課題がないわけでもないので、すぐ導入することはありませんが、

さらにグレードアップしたら考えてしまいそうです。

いずれ必須のシステムになるでしょう。

人工関節周囲の骨折

人工関節は50〜85歳頃の方が多く受ける手術です。

手術により劇的に疼痛は改善しますが、その後は、また歳をとっていきます。

10年経過すれば、75歳の方は85歳、85歳の方は95歳になります。

徐々に下肢の筋力が落ち、目が悪くなり、転倒しやすくなります。

 

10年以上前に他院で人工股関節置換術を受けた70代の女性が、転倒により当院へ救急搬送されました。

左の大腿骨は大腿骨ステム直下で骨折しています。

この方は他院で人工股関節手術後に再手術を受けており、ケーブルが巻かれています。

骨折部に人工関節ステムの末端・ケーブルがあるため、このままでは骨癒合を見込めません。

前回手術のケーブルを抜去し、ケーブルを巻き直し、プレート固定を行いました。

さらに骨癒合を促すために、腸骨からの骨移植を行なっています。

 

このように、手術でなんとかすることはできるのですが、骨癒合までは時間がかかるため、

歩行能力は低下することが多いです。

一番大事なことは、転倒しないことです。

今は元気でも、人は歳をとれば必ず転倒しやすくなります。

家をバリアフリーにする、トイレやお風呂に手すりをつける、

適切なタイミングで杖やシルバーカーの使用を検討するなど、対策が必要になります。

 

電子カルテ化完了

2021年3月より電子カルテを導入しました。

カルテの保管期間は、最終受診日から5年間と法律で決まっています。

カルテ庫にある、2016年3月から2021年2月までが最終受診日である紙カルテの、スキャン作業を開始しました。

6ヶ月かけて、やっと空になりました。

私が全てのカルテを仕分け・分類を行い、受付、看護師、看護助手、秘書、理学療法士ら総力でスキャン作業を行いました。

これで休日や、診療終了後の18時から22〜23時まで、連日残って作業する日々が終わります。

外来は完全電子カルテ。入院カルテは、取り回しの良いミニカルテを作り退院時にスキャンしています。

紙カルテは5年来院がなければ、スペースの関係もあり処分されていたので、

人工関節の術後の患者さんが久しぶりに来院したとき、情報がないことがありました。

電子カルテになれば、今後はほぼ永久的に診療録が保管されます。

この部屋はカルテ棚が撤去され、面談室に変更する予定です。

高度な外反膝(X脚)の人工膝関節全置換術

先日70代の女性で、高度な外反膝(X脚)の人工膝関節全置換術(TKA)を行いました。

右膝が内側に入ったようなX脚になっています。

内反膝(O脚)が進み、膝の内側の軟骨がなくなる内側型の変形性膝関節症で

人工膝関節置換術が必要になる方が圧倒的に多いです。

しかしこの方は、外側の軟骨がなくなる外側型の変形性膝関節症です。

人工膝関節は、内側の靭帯の緊張に合わせて設置するため、このように内側の靭帯が

伸びきってしまっている外側型の変形性膝関節症は難易度の高い手術となります。

 

通常の人工関節より拘束性(安定性)を高めた機種を選択することで

内側の靭帯が伸びている方でも安定したまっすぐな膝にすることができます。

コロナワクチン

先日コロナワクチン1回目接種のため、宮崎市郡医師会病院に行ってきました。

当院もそうですが、面会禁止となっていました。

入院中は寂しいかもしれませんが、スマートフォンのビデオ通話などをご利用ください。

 

当院から処方された痛み止めや骨粗鬆症治療薬を内服中の患者さんから、

「飲んでいるけどワクチンを受けても大丈夫か?」の確認電話がよくきます。

全く問題ありませんので、どうぞワクチンを接種してください。

アナフィラキシーショックのような稀な副反応は予想が難しいため、

万一起きてしまった場合は「運が悪かった」と思うしかありません。

接種会場は副反応に対応できる体制になっていますので、ワクチンは是非受けましょう。

電子カルテ導入

2021年3月より電子カルテを導入しました。

岡本整形外科に戻る前は、ほとんどの病院が電子カルテでしたので、特に操作は困りません。

スタッフもすぐに適応してくれました。

しかし27年前から積み上がった紙カルテは、簡単に整理できるものではありません。

この写真は今週末の宿題です。

長い方は1994年からの記録があります。

すべてスキャンするわけにもいかず、要点をサマリーにまとめていきます。

パラパラとページをめくっていくと、現在普通に通っている患者さんが、

過去に大怪我をして大手術を受けていたりと、ついつい手が止まってしまいます。

分厚すぎる紙カルテは、過去の大事なイベントがわからなくなります。

終わりがみえない作業ですが、患者さんの長い歴史を振り返る、よい機会となっています。