岡本整形外科 副院長診療ブログ

病院を外から眺めても、どんな医師がいるのか、どんな治療をしているのか、わかるはずもありません。骨折・脱臼などの外傷や、関節の変形による痛みに対して、当院での手術例を中心にご紹介します。また整形外科トリビアも気の向くままに書いていきます。

両側同時 高位脛骨骨切り術2例

2019年11月は両側同時の高位脛骨骨切り術が2例ありました。

高位脛骨骨切り術とは、変形性膝関節症のうち内側の変形が強い(=O脚)の患者さんで、活動性が高い方に行う手術です。

変形が少ない膝の外側に、荷重部を移動(X脚にシフト)させることにより、痛みをとることができます。

変形性膝関節症は、両側同じように変形していく場合が多いので、両側同時手術の適応は意外と多いです。

一例目は40代女性です。

高度なO脚です。内側の関節裂隙(軟骨があるべきすき間)が消失しています。

60歳以上であれば、人工膝関節置換術を選んでもよい症例です。

関節鏡で膝の中を確認すると、膝の内側の軟骨が消失しているのに対し、

膝の外側の軟骨は十分に残っていました。

両足同時に矯正しています。術後は4週で退院し、経過は良好です。

 

次は50代女性です。

同じように内側の軟骨がすっかり消失しています。

年齢的には人工関節でも対応可能ですが、まだまだお仕事を現役で

頑張るために両側同時の骨切り術を希望されました。

術後の経過は良好で、おなじく4週で退院となりました。

両側同時手術の良い点は、片側ずつした場合に比べて、一回の全身麻酔ですむこと、入院期間が半分になることです。

欠点としては、術後1~2週は、片側ずつした方にくらべて移動が大変です。

終わってみれば、皆さん両側同時にやって良かったと言われます。

11月はこの2例以外に、両側同時TKA(人工膝関節全置換術)、両側同時UKA(人工膝関節単顆置換術)

が一例ずつありましたが、3~4週で退院しています。

 

 

 

40代女性 股関節高位脱臼

高位脱臼とは、乳児~幼児期から股関節が脱臼した状態です。

人間は適応力がありますので、なんとか歩けるのですが、変形が進むと歩行困難となります。

先日40代の女性の高位脱臼を伴う右変形性股関節症に対し、人工関節置換術を行いました。

右股関節の位置が左と違います。

40年以上この状態で歩いていたわけで、股関節の上の骨盤に新しい関節ができています。

この場合、本来の股関節の位置に戻すための手術操作、骨移植、靭帯調整が必要になり

難易度の高い手術になります。

術後の画像です。

足の長さがそろい、骨盤の傾きも改善しています。

痛みが取れ、驚くほど歩く姿勢がよくなりました。

外反母趾手術

外反母趾は、中高年以降の女性でかなりの有病率です。

しかし、膝や股関節ほど直接歩行に影響しないため、手術するケースは少ないです。

ほとんどの方が、薬局やインターネットで買えるような簡易装具で治療し、実際それで問題はありません。

母趾の付け根が腫れ上がって痛みが続いたり、足の裏に大きなタコ(ベンチといいます)ができて

歩行時に疼痛が生じ、保存治療で改善がないケースが手術になります。

見た目もよくなりますが、見た目を治すことが目的ではなく、足のアーチを調整し痛みをとる手術です。

 

40代男性の左外反母趾手術の症例を紹介します。

X線で左足の親指が外側を向いています。手術は全身麻酔で1時間程度の手術となります。

術後のX線写真です。中足骨という足の甲のあたりの骨を矯正します。

外反母趾手術は、以前はスクリューやピンを1~2本で固定する手術が主流で、初期の固定力が弱いことが問題でした。

当院では、強固な固定が得られるロッキングプレートを使って矯正位を保持します。

手術翌日より踵(かかと)を使って歩行可能です。入院期間の目安は3日~10日です。

術後数年経過して母指が外反してくることがありますが、骨格を矯正しているので、

見た目が少し戻る程度で問題はありません。

人工股関節勉強会

9/28(土)は、福岡での人工股関節の勉強会に参加しました。

九州を中心に、人工関節・関節外科を専門とする整形外科医250名が参加しました。

大学病院等の第一線で活躍する講師らが、それぞれテーマごとに講演し、

パネルディスカッションを行います。

手術適応、アライメント(脊椎を含むバランス)調整、

アプローチ(各種手術進入法)、インプラント(人工関節の機種)選択

合併症対策等、16名の講師により、みっちり6時間ありました。

昔の常識が、いつの間にか非常識になっていく医療の世界では、

勉強はとても大事です。

オーダーメイド人工膝関節(PSI)

当院では、全ての症例ではありませんが、

人工膝関節全置換術に対し、患者ごとにオーダーメイドでの骨切りガイド

(Patient Specific Instrument=PSI)を作成します。

かなり新しい技術で、使用しているところはまだ多くありません。

人工膝関節置換術における、大腿骨と脛骨の骨切角度(屈曲伸展・内外反・左右回旋)は、

股関節と足関節の位置を含めて計画をたてます。

術前にX線で股関節・足関節を含めて撮影し、計測して計画しますが、2次元画像のためどうしても限界があります。

PSIは、全下肢の3DCT画像から解剖学的に理想とする骨切りガイドを作成します。

3DCT画像を元に大まかな計画が送られてきて、術者が微調整し最終決定。

アメリカの人工関節メーカーより輸送されてきます。

 

長所短所をまとめると。

 

長所

●驚愕の精度で人工膝関節が設置できる →わずかな設置角のズレによる膝動作時の違和感が少なくなる

●手術侵襲が小さくなる →出血量減少。腫れが減り、回復が早い

(手術では10~12cmの皮膚切開しか視野がない。解剖軸を確認するために

様々なガイドを骨に穴を空けて設置する。そのため本来必要のない侵襲が加わる。それが一切不要となる)

 

短所

●手術が決して簡単にならないし、手術時間が短くもならない(正確に設置できるかは、術者次第)

●術前の手間がかかる

(X線のみの手術計画は10分でできるが、海外との数百メガの画像のやりとり、微調整、承認手続きで1時間近くかかる)

 

元々この骨切りガイドがなくても、良好な設置ができていたわけで、基本的になくてもできます。

しかし、3次元の膝に対して2次元のX線で計画しても、数度・数mmの誤差は生じます。

PSIは、技術と経験だけでは補えない部分をサポートしてくれます。

ただ軟骨や靭帯が邪魔をして正確な設置は意外に難しく、結局は術者次第です。

PSIは人工関節が簡単になるわけではなく、

熟練者が使ったら「鬼に金棒」となると理解してもらえば良いと思います。

 

人工膝関節全置換術(TKA)の両膝同時手術

8月には両膝同時の人工膝関節全置換術が2件ありました。

 

変形性膝関節症は、両膝同時に悪化することが多いです。

特にO脚が強い方は、片方だけ手術で真っ直ぐにしても、

手術をしていないほうの足が痛く、リハビリの足をひっぱります。

両膝の人工膝手術は、多くの方が片方ずつ行います。

その場合、片方が終わって約4週後に反対側を行います。

入院期間は約7~8週となります。

 

両膝同時に行った場合は、術後3~4週で退院可能です。

しかし、内科的な問題が少ない、体力が十分ある70代前半までが適応です。

また、リハビリは両膝同時なので、その分大変です。

患者さんには、「片方ずつの方の、2倍努力してください」と説明しています。

 

先日行った両膝同時手術(70代女性)の術前です。

高度なO脚であり、片方だけ治しても歩行は改善しません。

両膝同時に手術を行い、翌日から歩行練習開始です。

両膝同時を希望する方は、仕事復帰や家族のために頑張る方が多く、

最初は苦労しますが、3~4週で問題なく退院されます。

生目台中学校からの職場体験

生目台中学校の学生さん3名が、当院で3日間職場体験を行いました。

希望する職種はそれぞれ違いますが、将来医療に携わりたいそうです。

当院の看護師、理学療法士、調理師などスタッフの仕事を見学したり、

私の外来見学、そして3日間で6件の手術を見学してもらいました。

楽しんでもらえたようで、よかったです。

2019年6月 手術内容

2019年6月は45件の手術がありました。

 

全身麻酔手術 27

人工膝関節全置換術 6件

人工膝関節単顆置換術 5件

人工股関節全置換術 4件

膝関節鏡手術7件

骨折手術3件(橈骨2件、上腕骨1件)

腫瘍切除 1件

関節授動術 1件

 

局所麻酔手術 18

腱鞘切開 10件

アキレス腱縫合 3件

手根管開放術 1件

腫瘍切除 2件

骨接合1件(指)

二次縫合術 1件

 

PTAバレーの時期なのか、一ヵ月で3人のアキレス腱縫合術を行っています。

アキレス腱縫合手術は、極端に怖がりの方は全身麻酔で行いますが、通常は局所麻酔で十分可能な手術です。

時間は30分程度で、患者さんと雑談しながら、穏やかな雰囲気のなか行われます。

 

腱鞘切開は、ばね指(腱鞘炎の悪化)といって指がひっかかり強い痛みが生じた方、

曲げ伸ばしができなくなった方が受ける手術です。

月4~5件のことが多いですが。今月は畑仕事や庭の剪定が原因なのか、1カ月で10件(12指)でした。

この手術は局所麻酔で1本5~6分で終わります。

他院で何回もステロイドの注射を受けたが治らないと、来院する方もいます。

ステロイドの注射は、とても痛い割に効果が限定的で、回数を重ねると腱の劣化を招きます。

中高年以降のばね指は、年齢による腱鞘の肥厚があるため、注射で改善が難しいことが多いです。

保存治療【安静、テーピングなどの固定、湿布、温熱療法、注射】が無効な場合、

手術が必要となります。

日本整形外科学会学術総会と医学書のブース

5/11-12に、パシフィコ横浜で、整形外科医にとっての最大のイベントである、

日本整形外科学術総会に参加してきました。

8~9の会場に別れ、様々な領域の発表・講演が行われます。

全国の大学病院や大病院で行われている最先端の研究や手術について

勉強することができました。

専門外の領域も、この機会に最新の知見を学びます。

学会会場を後にして空港に向かうとき、ブログ用の写真をなにも撮っていないことに気付きました。

写真は、医学書専門店のブースになぜかあった骨の名前のついたTシャツです。

 

医学書専門店に行っても、整形外科の本だけあるわけではありません。

しかし、こういったイベントでは、最新の整形外科領域の本が大量に並べてありますので、

じっくり中身を確認して本を買うことができます。

最新の手技書を2冊買いました。

2018年救急車受け入れ件数

当院では積極的に救急車の受け入れを行っています。

 

H30年1月~H30年12月

総受け入れ件数116件

入院となったもの(当日or後日手術目的での入院)

36件

手術となったもの

20件

 

昨年は月当たり約10台の救急受け入れでした。

最近はベッドが満床のことが多く、入院の可能性がある患者さんの救急搬送を

断わることが増えています。

今年は減るかもしれません。