岡本整形外科 院長診療ブログ

当院での手術症例、手術実績、医院近況等をご紹介します。

30代男性 膝関節鏡による自家軟骨移植術

 

30代の男性。

7年前に左膝の前十字靭帯断裂に対して他院で再建術を受けています。

その後、全力疾走時に疼痛が出現し当院受診。

初診時の所見から前十字靭帯再断裂を疑いMRIを施行。

MRIで前十字靭帯の再断裂と大腿骨内側の軟骨損傷を認めました。

 

関節鏡では下の写真のように、体重がかかる大腿骨の内側に軟骨欠損を認めます。

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前回手術後の靭帯安定性が良くなかったのか、外傷によるものかはっきりしませんが、

広範囲の軟骨欠損にたいしては、膝関節の別の部位から軟骨を移植する方法があります。

 

まずは、大腿骨の荷重がかかりにくい部分から、骨軟骨柱(軟骨・軟骨下骨、海綿骨)を筒状に採取します。

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その後、移植する部位に、同じサイズの筒状の穴を掘ります。

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そして、採取した骨軟骨柱を移植します。移植する骨軟骨柱を複数使用すれば広範囲の軟骨欠損に対応できます。

この症例は、1本の太めの骨軟骨柱で十分に欠損部分を補填できました。同時に前十字靭帯再再建術を行なっています。

全ての軟骨欠損に対応できるわけではなく、外傷や、若年者むけの手術となります。

高齢者の加齢・変形による軟骨欠損に対しては、人工関節や高位脛骨骨切術の適応となります。

2023年 手術実績

2023.1.1〜12.31までの手術実績を紹介します。

全身麻酔手術432件

局所麻酔手術83件

合計515件

 

内訳

全身麻酔手術  合計432件

人工股関節全置換術 35件

人工膝関節全置換術 47件

人工膝関節単顆置換術 163件

人工膝関節再置換術 3件

人工股関節再置換術 2件     人工関節合計250件

高位脛骨骨切術 19件

関節鏡手術 109件

骨折手術 12件

その他の手術 42件

 

局所麻酔手術 合計83件

腱鞘切開手術 58件

手根開放術 8件

その他の手術 17件

 

例年通り、両膝手術、両手同時手術は2件でカウントしています。

手指の腱鞘切開は同側であれば、何本同時でも1件でカウントしています。

人工関節手術の件数が大幅に増加し、骨折手術や、骨折後の抜釘手術が減りました。

入院期間が長くなる人工関節手術の割合が高まったため、19床のベッドはほぼ満床が続き、

外傷の救急車の受けいれが困難になったこと、外来にこられた骨折患者さんを他院に紹介することが多くなったからです。

ありがたいことに、宮﨑市のみならず、市外、県外、そして去年は国外からの患者さんの手術がありました。

退院後の術後リハビリは、リハビリ可能な近くの病院やクリニックに紹介状を作成しますので、

安心してこられてください。

50代男性 高位脛骨骨切術の術後1年 軟骨の状態

変形性膝関節症により、膝の軟骨が損傷することに対しては、

人工膝関節置換術、人工膝関節単顆置換術、高位脛骨骨切術を行います。

 

 

今回は、以前にもブログで紹介したことがありますが、

人工関節を使わずに、O脚バランスを調整することよって高位脛骨骨切術の経過を説明します。

 

50代男性。X線検査で左膝の内側軟骨は高度に損傷しています。

またMRIで内側半月板の損傷がありました。

術前X線写真。

膝関節内の動画

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高度に軟骨が損傷しています。

また内側半月板は水平断裂という状態になっています。

半月板を部分切除したあとの動画

V014

矯正骨切術後のX線

最初のX写真と比べてO脚が矯正されています。

術後1年目に、矯正のために使用したプレートを抜去します。

そのときに、膝関節内の動画です。

高度に損傷した軟骨が修復されたことがわかります。

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全ての症例でこのようになるわけではありませんが、

バランス調整がうまくいくと、このように軟骨の修復が促されます。

活動性が高いスポーツ愛好家であれば、良い適応となります。

時間はかかりますが、人工関節と違い、術後の運動制限はありません。

2023年前半期手術件数 症例紹介 両膝同時人工膝関節全置換術

忙しくなり今年に入ってからの手術件数を数えていなかったのですが、

スタッフが空いた時間でカウントして教えてくれました。

1〜6月の総手術件数 265

(主な手術)

人工膝関節全置換術22件

人工股関節全置換術15件

人工膝関節単顆置換術90件 (人工関節合計125件)

膝関節鏡手術56件

骨切り術11件

腱鞘切開37件

他36件

 

予定手術でベッドが満床のことが多いため、

手術内容によっては1〜2ヶ月以上待つことが多くなりました。

人工膝関節全置換術や人工股関節全置換術は、水・土PMしかできないため、お待ちいただくことが多いです。

骨折などの外傷を受けることが難しくなり、外傷の患者さんは、近隣の基幹病院に紹介することが増えております。

 

症例紹介

60代の男性です。

農業をされており、長く保存治療を続けていました。

以前より疼痛はあるものの、なんとか仕事はしていましたが、ついに限界を感じたようで手術を決意されました。

膝内側の軟骨が完全に消失し、高度なO脚となっています。

骨を切る角度を調整し、術後のレントゲンでは足のバランスがよくなっています。

両膝同時手術は、来院した患者さんが、驚かれることがありますが、入院期間の短縮や、二度の全身麻酔を

避けられるなど、メリットは多いです。

しかし、年齢、体力的な問題がある方、片方ずつを希望する方は、片方ずつ行なっています。

 

 

 

逆V字型矯正骨切り術の2例

日本人の多くがO脚気味ですが、それが高度な場合、

若年者でも膝の内側の変形性膝関節症が進みやすくなります。

50代以降であれば人工関節でも問題ありますせんが、30代〜40代の活動性が高い年代や

スポーツ愛好家は、人工関節より回復に時間がかかりますが矯正骨切り術を考慮します。

 

矯正骨切りは膝の内側を開くOPEN WEDGE型と、

膝の外側を短縮させるCLOSED型でほとんど対応できます。

どちらも1時間程度の手術です。

しかし、O脚が強く、大きな矯正が必要な場合、術後の外見に不自然さが出てきたり、

膝前面にかかるストレスが強くなる欠点がありました。

 

今回紹介する逆V字型骨切り術はそれらの欠点が生じることなく、大きく矯正できます。

欠点としては手術手技が煩雑になり、手術時間はほぼ2倍になります。

さらに回復までの時間も、通常の骨切り術より長くなります。

 

今回紹介する症例は、どちらも40代の男性です。両側同時に行なっています。

1例目は格闘技指導者です。海外在住の方です。

ホームページで当院のことを知ってこられました。

足を揃えて立っているのに、膝の間がおおきく開いており、

かなり強いO脚となっています。

このバランス自体は、生まれつきのもので、悪いわけではありません。

症状がなければ治療は必要ありません。

しかし運動に支障があり、手術を希望されました。

あまり長く滞在できず、すぐに海外に戻られるとのことで、

膝内側のプレートは分厚く強固なものを選択しています。

 

2例目はスポーツ愛好家の40代の男性です。

1例目の症例と同様に、かなりのO脚バランスです。

仕事への復帰をそれほど急がないため、

膝内側のプレートは皮膚への刺激が少ない薄型を選択しています。

 

どちらも足のバランスが大きく変わっていることがわかると思います。

回復に時間はかかりますが、人工関節と違い、骨癒合後に

運動に制限がないことが最大のメリットとなります。

2022年手術実績

2022年は524件の手術を行いました

全身麻酔手術423

人工関節手術190件

 人工膝関節全置換術(TKA)72件

 人工膝関節部分置換術(UKA)86件

 人工股関節全置換術(THA)32件

膝関節鏡手術(半月板部分切除・縫合・靭帯再建など)140件

高位脛骨骨切り術(HTO)12件

骨折手術19件

抜釘手術47件

その他の手術15件

 

局所麻酔手術101

腱鞘切開手術65件

手根管解放術28件

骨折手術4件

その他の手術12件

 

両手、両膝同時手術は2件でカウントしています。

腱鞘切開が同側の場合は、2〜3本同時手術でも、今まで通り1件でカウントしています。

 

2021年は、手術件数が急激に増加したため、スタッフの負担が増えてしまいました。

2022年は、時間外診療や救急外傷の受け入れを制限したため、手術件数はやや減っています。

開院30年

2022年12月15日で当院が開院30周年となりました。

父が開院したときは、敷地と建蔽率の関係で現在の半分程度の大きさでした。

その後隣接した土地を購入したことにより増築可能となり、30年間で3回の増築を行い現在の大きさとなっています。

手術室が器材置きも兼ねていた開院時と比べて、手術室面積の約2倍の広さの手術器材・手術準備室ができました。

これにより、連日1日2〜3件の手術が可能となりました。

リハビリ室の広さは3倍となりました。

NSステーションの面積も約3倍。スタッフ休憩室は開院時はありませんでしたが、現在は男女別、理学療法室ごとに休憩スペースができています。

以前は術後の患者さんを、ストレッチャー(移動台)に乗せて、スロープで押し上げて2Fに上げていましたが、

現在はストレッチャーが入るエレベーターがあります。

これでようやく、設備の面では近代的なクリニックになりました。

外観は、最近の素敵なデザインのクリニックには遠く及びませんが、

中身を充実させるつもりなので、40周年になっても今のままかもしれません。

前十字靭帯再建術(ゲスト手術)

先日、40代男性の陳旧性の前十字靭帯断裂に対し、

東京女子医大整形外科教室の岡崎先生をお呼びして一緒に再建術を行いました。

膝の靭帯再建、骨切り術、人工関節を専門とし、全国から講演の依頼を受ける、大変忙しい先生です。

手術前後の時間に、膝手術のトレンドを多く伺いました。

常に勉強しておかないと、いつの間にか若手医師に

「まだ、その方法でやっているのか」などと、思われることになります。

新しい手技やトレンドは、今後も勉強していかないといけません。

 

関節鏡で確認した、断裂して長い時間が経過した前十字靭帯です。

関節鏡用のフックで緊張を確認しています。

全く緊張のない状態でした。

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下の画像が靭帯再建後です。

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経過良好で術後2週で退院となりました。

現在の手術日について

よく患者様から、手術日はいつですかと質問を受けます。

当院では、ほぼ毎日手術を行っており、現在は下記のようなスケジュールで手術を行っています。

 

人工膝関節全置換術(片方・両側)・人工膝関節単顆置換術(両側)・人工股関節全置換術・関節鏡視下靭帯再建術

時間がかかる手術のため水曜日・土曜日午後の休診時間に行っています。

 

高位脛骨骨切り術・人工膝関節単顆置換術(片方)・関節鏡視下半月板縫合術

1時間程度の手術なので、火曜日・木曜日・金曜日の昼休み中に1件ずつ行っています。

 

関節鏡視下半月板部分切除術や、骨接合術(手関節や指など)

15分〜30分程度の手術のため、月曜日・火曜日・木曜日・金曜日の昼休みに、1〜2件ずつ行っています。

 

腱鞘切開手術・手根菅開放術

局所麻酔で5分程度の手術のため、月曜日・火曜日・木曜日・金曜日の15時頃、外来の合間に行っています。

 

同じ手術でも、人工膝関節単顆置換術(片方)は手術ができる日が多いので2〜4週待ちで受けられることがありますが、

両側同時であれば、水曜日・土曜日のみであるため2ヶ月待ちになることがあります。

 

また手術日の枠があっても、病床が満床で手術を入れられないこともあります。

 

手術を決断された方は、1日もはやく手術を受けて、痛みを取りたいと考えていると思います。

しかし、癌と違い1〜2ヶ月の違いで、その後の経過が大きく変わることはありません。

手術までの間、術前リハビリテーション(外来)を行うことが可能です。

希望の方は申し出てください。

 

日本整形外科学術総会のオンライン参加

整形外科専門医を継続するためには、学術総会への参加と、教育研修講演に参加することによって一定数単位を取得する必要があります。

コロナウイルスの流行以来、東京や福岡の教育研修講演に参加できず、単位が危機的でした。

ありがたいことに、今年から整形外科医にとって最も重要な学会である日本整形外科学術総会に、オンラインで参加ができるようになりました。

オンデマンド(みたいときにみれる)による受講のため、仕事が終わってからパソコンで1日1〜2講演受講しています。

しかし、学会参加は気分転換のちょっとした旅行でもあったので、複雑な心境です。